日本酒を楽しむ・第二弾
酒米と製法について

前回、「日本酒を楽しむ・食事に合わせた日本酒のチョイス」で、日本酒の分類についてお伝えしましたが今回はお米について。日本酒は米から出来ているのは皆さんご存じだと思いますが、日本酒に使用するお米(酒米)は種類が豊富。また、日本酒は製法によっても風味が大きく変わるのが特徴です。そこで、今回はたくさんある酒米の種類の一部と製法についてお話致します。

お米

酒米

日本酒は米を主原料として造られるお酒。用いる米によって味も大きく変わり、酒造りに向くように開発された米を「酒造好適米」または「酒米」と呼びます。種類は100種類を超え、作り手は目指す味に合わせて米の種類を選んで使用する。酒米に求められるものとして、精米があげられます。食用米の精米歩合はおよそ93~92%ぐらいに対して、酒造りに使用する白米は大半が70%以下。吟醸酒なら60%以下、大吟醸なら50%以下でないと法律上認められません。そこで、酒米に求められるのは、磨くための高精米に耐えられる粒の大きさと粘り気が必要です。量にもよるが、60%で24時間、50%で48時間、40%なら72時間という、長い時間をかけて精米を行います。また、酒米の成分は飯米に比べてたんぱく質や脂質が非常に少ないのも特徴の一つ。それらの成分はお米の「てり」を出すために必要で、飯米には多く含まれているが酒造り、特に吟醸造りには邪魔な成分となります。たんぱく質が多すぎると雑味の原因となり、脂質は香りの成分を立ち上げる妨げになります。

お米の種類

「山田錦」
酒米の王者と言われ、大粒で高精米に向く。兵庫県農事試験場が開発し昭和11年に登録された。長らく「山田錦」を使用しなければ全国新酒鑑評会で金賞は取れないとまで言われていた。「獺祭」は「山田錦」のみを用い、大吟醸か純米大吟醸規格で造られる。
「雄町」
山田錦と並び称される酒米。掛合わせで生まれた米ではなく安政六年(1859)に岡山で「岸本甚造」が偶然発見した背の高い稲を選抜改良したもの言われている。心白が大きく軸の太い味になると言われている。
「五百万石」
昭和三十二年に新潟県農業試験場で開発された米。米の粒が小さく高精米にあまり向かないがキレのある美しい酒に仕上がると言う。作付面積は全国でもトップクラス。
「亀の尾」
昭和二十六年に山形の篤農家、「阿部亀治」が冷害で生き残った稲を選抜改良。ここから多くの酒米と飯米が生まれた。病害虫に弱く戦後はほとんど作る人がいなくなったが、近年復活した。酒質は綺麗で淡麗なものとなる。粒が大きめで、米粒の半分以上を精米して削る吟醸酒や大吟醸酒を造るのに適している。
「美山錦」
昭和五十三年、長野農業試験場で生まれた。「たかね錦」へのガンマ線照射により突然変異した米。「山田錦」や「五百万石」に次いで日本で最も生産量が多い酒造好適米の上位三位に入るほど有名な米。造られた酒は淡麗ですっきりとした味わいを生み出すと言われている。
「八反錦」
八反の名を持つ米は広島でいくつも開発栽培されている。在来品種「八反草」を改良した「八反三十五号」と飯米の「秋津穂」を掛け合わせて生まれたのが「八反錦」である。キレがよく香りが爽やかな酒になると言われている。
「愛山」
かつては兵庫県の老舗蔵でのみ使用されていたが、「十四代」を醸す山形の高木酒造がこれを用いることで、甘みのあるその味が広く世に知られるようになった。酒米の王様「山田錦」と「雄町」を祖父母としその名前を一文字ずつ取って「愛山」と名付けられた。濃醇な米の甘みが感じられる旨みのある酒が多い。高価格な酒米。
「千本錦」
平成十四年に登録された比較的新しい酒米。広島で「中生新千本」と「山田錦」を交配し生み出された。穂は眺めで粒が大きく硬めで醸造に時間がかかるが、その分、酒質は美しくなる傾向がある。
「酒未来」
十四代を世に出した「高木酒造」が開発。優雅で瑞々しい酒に仕上がり、現在では二十以上の気鋭蔵が用いる。

Sake

製法貯蔵用語

「あらばしり」
日本酒を絞る際に一番最初に出てくる部分を詰めたもの。フレッシュな香りが特徴。新酒の時期に出回る。
「中取り」
日本酒を絞る際に『あらばしり』の次に出てくる部分を詰めたもの。新酒の時期に出回る。
「雫酒(袋吊り)」
絞り方のひとつ。酒袋を吊るして、自然の重みで滴るお酒を一滴ずつ集めたお酒。味は美味だが高級。
「原酒」
絞ったお酒を加水せず瓶詰したもの。度数は18~20度になる。ロックや凍らせて飲んでも美味しい。
「無濾過」
脱色や香味の調整を目的とする『濾過』をしない。『無濾過生原酒』として販売され絞ったそのままの味わいを楽しめる。味に複雑性があり大変美味。
「おりがらみ」
絞ったばかりの日本酒は白く濁っており、その濁りを『オリ』と言い、通常はオリが沈殿してから濾過作業に入る。おりがらみはオリが沈む前に瓶詰したもの。コクを感じるタイプが多い。
「速醸仕込み」
生もと仕込みに対するもので製造過程の酒母造において『乳酸』を添加する方法。現在、流通している日本酒のほどんとが、この速醸仕込み。
「生もと仕込み」
酒母造りにおいて、壁や柱に住み着いている『乳酸菌』を利用して醸すお酒。ヨーグルトのような香りと酸味がある。生もとを行っている酒造は大変少ない。
「山廃仕込み」
生もと仕込みと同様に乳酸菌を利用するが山卸(やまおろし)と言う作業を省いたもの。濃厚な味が多い。
「新酒・搾りたて」
出来上がったばかりの日本酒。フレッシュで爽やかな香味。
「生酒」
2回行う火入れ(加熱処理)を行わない。大変美味しいが、味が変わりやすく常温保存ができない。
「生貯蔵酒」
生酒のままタンクに貯蔵し、出荷前に一度だけ火入れを行うお酒。春から夏にかけて出回る。
「生詰め酒」
タンク貯蔵前に一度だけ火入れをして、そのまま熟成させたもの。
「にごり酒」
白く濁ったお酒の総称。目の粗い布で絞ったものが多い。
「ひやおろし」
春から夏にかけて熟成し秋に出荷される生詰め酒。一年で最も美味しいとされる。

いかがでしたか?和食と一緒に日本酒を嗜む際には、お連れの方にお米の話をしてみてはいかがでしょう?


Written by JAPAN GASTRONOMY AWARDS