料理人がお通しに込めるもの
皆さんはお店の最初の料理を食べるときどのように楽しんでいるでしょうか?なんとなく食べているだけだとしたらもったいない、最初に出される料理にはたくさんのものが込められています。今回はお通しや前菜をより楽しむためにどんなことに注目したらいいか考えます。
お通し、付き出し、前菜の違い
まず最初にだされる料理としてお通し、付き出し、前菜に分けて簡単に説明します。お通しは注文を受けてからお出しするもの、付き出しは注文を受ける前にお出しするもの。どちらも昔からの日本特有の文化で慣例的なものです。ここでは前菜はおおまかにコースで最初に出てくるものとしましょう。出す順番や提供の仕方は違えど、どれも料理人にとって最初に食べてもらう大切な一品です。
最初に口にしてもらうということ
さて料理人はこの最初の一皿をどんな気持ちで作って提供しているのでしょうか。第一に挨拶代わりの一品といったところでしょう。「これがお店の味です」、「この店の料理人はこんな技術があります」、「こんな気配りができます」等です。はじめに食べた料理が美味しいとその後に食べるものにも期待がふくらみますよね?期待してください、安心してください美味しいもの食べさせますよという気持ち。切り方ひとつで包丁の技術や、調理法の技術、目で見て楽しんでもらうための盛り付けの技術。寒い季節には温かいものをお出ししたり、季節感を感じられる食材をとりいれていたり、注文の品が出る間に素早く提供してくれていたり、常連さんにはお酒の種類や好みのものに合わせたりする気配り。最初の一口だからこそ印象付けたい、感じて欲しいのです。
それって最初じゃなきゃダメなの?うちは天ぷらが名物だからそこで勝負しているんだよ!なんて思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし人間には心理学で言う初頭効果とよばれるものがあります。人は最初の印象に強く引っ張られ、最初の印象がその後も影響していく効果で、最初の印象が良い方がより良く感じてもらえるということです。お通しが美味しい店は間違いないんだよといったことを、みなさんも一度くらい聞いたことがあると思います。こういった効果があるからより印象強く言われるのでしょう。心理の面から言っても最初に食べてもらう料理に力をいれることがどれだけ大切かわかります。料理人にとってもお客様にとっても大切な最初の料理。作り手の込めたものにを想像しながら口にすると、普段と違った楽しみ方ができるかもしれません。
Written by JAPAN GASTRONOMY AWARDS