焦げと旨味の境目はどこにある?

焦げと旨味の境目はどこにある?

こんがり焼きあがった焼き魚から肉汁たっぷりのステーキまで多種多様な焼き物が世の中にはあります。キレイな焼き目がついて香ばしい香りが食欲をそそられます。料理人は焼き物を作るときに焼き目をしっかりつけなさいと教わっていると思います。しかしどこまで焼くのが良いのでしょう?焦げるギリギリまでなのか、ただキレイにキツネ色に焼けばいいのか?今回は焼くということを考えます。

メイラード反応と炭化

そもそも焼き色がつく、焦げるとはどういうことなのでしょうか?メイラード反応という言葉があります。食材を加熱した際に食材の中に含まれているアミノ酸等が糖と結びついて起こる化学反応のことです。このメイラード反応により色は褐色化して焼き色がつき、香りとアミノ酸が凝縮され旨味となって感じられる様になります。それでは焦げているというのはどういう状態かというと、炭化して炭になった状態のことです。200℃を超えるような強火で加熱し続けると起きてしまいます。

さてこの境目はどこで判断できるのでしょうか。焦げているというと真っ黒になった食材を思い浮かべると思います、食べると苦いですよね?炭化して栄養価を失ってしまった食材を人間は苦いと感じるようになっています、ここまでくると完全な焦げです。ではそのギリギリ手前まで焼けば美味しいのかというと食材によって変わります。ここからが料理人の腕のみせどころです。

旨味を最大限にひきだして焼く=上手にメイラード反応を起こす

食材に含まれるアミノ酸の種類と加える温度によって香りが変わってきます。ということは食材によって加熱するべき温度が変わってくるということになります、さらに食材の大きさやどう食べさせるかも変わってきます。ステーキだとわかりやすいです、メイラード反応を起こすために160℃の温度で焼き上げるとします、しかし美味しく食べてもらうために必要な肉汁は66℃を超えてくると流れてしまいます。ということは60℃くらいで低温調理をしてから高温で焼き付けメイラード反応を起こして美味しく仕上げる、といったことが考えられます。(他にもいろいろなやり方があります)ちゃんと火が入ってればいいとだけ思っていた方がいるなら、是非こういった理論も考慮して焼き物を調理していくとそれぞれの料理の焦げと旨味の境目が見えてくるかもしれません。そのためにどんな器具を使って焼くのか、どのような下ごしらえをしておくのか、まだまだ料理の奥は深まるばかりです。


Written by JAPAN GASTRONOMY AWARDS