串打ちの技術
串打ち、それは焼くために串に刺すこと。このことが焼き物において家庭の料理と料理屋が作る料理の大きな違いとなります。「串に刺さなくてもフライパンやグリルで焼けば同じじゃないか?」・「バーベキューと同じことじゃないの?」・「焼き鳥ってただ切って肉に刺せばいいだけでしょ?」など一見簡単そうに感じるかもしれません。しかし料理とは串打ちひとつとっても奥が深いものです、今回は料理人の串打ちの技術について考えていきます。
串を刺す理由とは
主に直火焼きで焼くために串を打って焼くのですが、直火で焼くなら網焼きもグリルも同じじゃないかと感じると思います。では串を打って焼く利点はどこにあるのでしょうか?手元で動かせて便利である、材料を崩さないで焼ける、金串の焼き物だと熱の周りがちょうど良くなる、タレを塗りながら焼ける等たくさんの利点があります。例えば焼き鳥、手元で動かせるからそれぞれの材料に合わせて細かい調整ができ、ちょうどいい塩梅の焼き加減で仕上げることができます。魚の切り身を焼く時は身の状態に合わせて串打ちの種類を変える事で崩れないようにしたり、出来上がりをキレイに仕上げたりできます。鮎の塩焼き等は踊り串で刺して焼くと、仕上がりに躍動感もあって大変美味しそうになります。打ち方はおどり串、扇打ち、波打ち、並べ打ち、たすき打ち、一本打ち、つま折、平打ち、格子打ち、反り打ち、片棲、両棲等、串の打ち方だけでも10種類以上ありますが、そこを使いわけて焼くことが料理人の技術の一つです。
もう一つの技術が一回で打つということです。何度も打ってしまうと穴が広がり、焼いている間にせっかくの旨味が漏れ出してしまったり、手の温度や圧力で材料に負担をかけてしまいます。そのため料理人は的確に材料を切り、串を打つべきところはどこなのかしっかり見極めなければなりません。焼き鳥屋さんなんかでも”串打ち3年”なんてことをいわれますが、串の打ち方で火の通り方や美味しさも変わり、どれだけ焼き手がうまく焼こうとも串打ちの時点で技術が足りなければ美味しさが損なわれてしまいます。
串打ちして焼いているかどうかが家庭で頂く焼き物と、お代を払って頂く料理屋での焼き物を大きく隔てているものです。串打ちの前の材料の下ごしらえの技術ももちろんのこと、食材、焼き物の知識があってこその串打ちという技術。意識して使い分けられると焼き物が更に素晴らしいものになるでしょう。
Written by JAPAN GASTRONOMY AWARDS